病気で入院しているときに病状が進んだ場合、延命治療のことを考えなければならないでしょう。
※延命治療:一般的には、人工呼吸器を思い浮かべる方が多いでしょうが、その他に胃ろう等があり、治療しなければ死に至る病気や障害を負った場合に、治療しても回復の見込みがない状態で、生命維持活動を保持するための治療のことを指します。
※胃ろう:手術によって腹部に小さな穴を開け、そこに胃ろうカテーテルと呼ばれるチューブを通して栄養剤を注入していく栄養補給法です。
今の医学では、回復の見込みがない状態でも死期をある程度引き延ばすことは出来ます。
延命治療を本人が望んでいるのであれば、やっていいかもしれませんが、延命治療を実施する終末期になると、意思判断能力を持った患者は少ないでしょう。
そのため、判断能力のないままご家族や医師の判断に任せて治療を行ってしまうと、患者自身が意に反して生き延びなければならないという選択しかできなくなります。
その場合、家族の意思によって延命治療を止めさせることもできますが、延命治療を止めると、同時に患者はなくなってしまう恐れがあるため、家族がその判断をするには大きな負担となります。
また、延命治療はあくまで治療になるため、医療費として料金が発生します。延命治療をすればするほど治療費がかかってしまい、金銭的な負担が大きくなってしまいます。
延命治療をしないためには
次に「延命治療をしない」という判断をあらかじめする方法をについてご紹介します。
リビング・ウィルという、延命治療に対して「末期的な状態ならば延命治療をしないでくれ」と、元気なうちにその意思を書類に残しておく方法があります。
リビング・ウィルの書類を作成する方法には、尊厳死宣言公正証書や日本尊厳死協会が発行している事前指示書があります。
尊厳死宣言公正証書は、公証人によって記載内容が法律に触れてないかを確認して作成する文書で、証明力が強く、信頼性がある文書です。
ただ、日本では安楽死と尊厳死に関する法整備はされておらず、法的には有効と言えません。しかし、医療の現場では尊厳死宣言公正証書を提示すると、90%以上の割合で尊厳死を許容しているようです。
尊厳死宣言公正証書
尊厳死宣言公正証書には以下の内容が書かれています。
・病状が完治せず、死期が迫っている状態になったときは延命治療を拒否する。
・ただし、苦痛を和らげる処置はしてほしい。
・尊厳死を容認した医師や家族に対して、追訴の対象としないようお願いする。
・家族の了解も得ている。
・これは、精神が健全な状態にあるときにしたものであり、精神が健全な状態にあるときに私自身が撤回しない限り、その効力を維持する。
以上が尊厳死宣言。あなたがそのような状況になったときに、自分の威厳を損なわないような扱いをしてもらうにはどうあればよいかを考えてください。そうすれば、おのずと結論は見えてくるでしょう。
第39回 相続と終活の相談室
行政書士
家族信託専門士 中家 好洋
千葉ニュータウンNEWS6月号より