第十三回「「滅びゆくメダカとのさばるコイ」
童謡の♪めだかの学校♪に歌われているメダカは、地域の呼び名が5000もあると言われるほど、身近な魚でした。小川で群れをなす様子を、子どもたちがのぞき込んでいる姿が、昔の里山の情景とともに、目に浮かぶます。
そのメダカは、以前から絶滅危惧種に指定されています。当会が年に2~3回実施している亀成川定例モニタリング調査においても、近年は見つかっていません。生活排水などによる川の汚染や、川の拡幅工事、田んぼなど産卵できる環境との遮断、外来魚の放流など、いずれも犯人は人間です。しかも、絶滅を止めようと、よそからもってきたメダカの放流によって、地域ごとの遺伝的多様性が乱されている問題もありますし、最近のメダカ飼育ブームによって、飼えなくなったメダカが川に放されて、ラメ入りのメダカが泳いでいるという珍風景もあります。善意や趣味から、生態系が壊されているのです。
カダヤシの移入もその例です。メダカそっくりで、蚊を退治してくれるというので、四国のある県で輸入されたのが始まりです。カダヤシはグッピーの仲間で、卵胎生、すなわち卵(100~300)が雌の体の中で育ってから、幼魚として外に出るので、一回に10個程度しか卵を産まないメダカは簡単に駆逐されてしまいます。
間違った善意により印西市の生態系を壊している例がコイの放流です。自然豊かな亀成川にしたいとコイを放流した人がいたため、コイが大繁殖しています。コイはもともと亀成川にはいなかった魚です。魚や貝や昆虫などあらゆるものを食べ、他の生きものの産卵床などになる水草を引き抜きます。
別所谷津公園や調節池では、心無い釣り人にバスやギルを入れられて(法律違反ですので、個人でも300万円以下の罰金など科せられます)、困っているところに、コイまで放流されてしまいました。トンボもゲンゴロウも貝も沈水植物も魚も、みんなやられてしまう上に、一回の産卵数が数十万個という数です。とても太刀打ちできません。必殺コイ釣人求む。(立入禁止区域ですので、心ある釣り人は当会まで連絡ください)写真提供:NPO法人 亀成川を愛する会
追記
当会は、コイに大変困っているので、メダカにひっかけてコイの問題を挙げました。どちらも悲しい話です。
本文にある亀成川のコイも、15年以上前に、引っ越してきてコイを入れた人の話を実際に聞いたのです。「コイを亀成川に入れたところ、地元の人間が捕っていた。田舎の人は自然がわかっていない」と嘆いていました。地元の人は、コイはタナゴ類の産卵する二枚貝を食べてしまうのを知っているので、コイなんか入れられてはたまらんと捕ったのです。
間違った善意による自然破壊としては、私達が亀成川の水草を植栽して、アメリカザりガニやカダヤシを駆除していた小さな池のビオトープに、コイが入れられて、ビオトープ化をあきらめたという現実があります。
いまでは川も池もコイだらけになって、投網や刺し網など使っていますが、爆発的に増える一方で、ほとほと困っています。美しいコイが泳ぐ池には、沈水植物がほぼないことを思いだしてください。
そもそも日本固有のコイは、琵琶湖にいるものだけで、あとは、中国から移入されたヤマトゴイが祖先です。ですのでコイについての認識を訴えたいのです。
千葉ニュータウンNEWS6月号より