「うちは仲がいいから大丈夫」――そう思っていませんか?遺言書がない家族の落とし穴
「うちは家族仲がいいから、相続で揉めるようなことはないですよ」。
そんな言葉を、私はこれまで何度も聞いてきました。
ところが実際には、相続の相談でいちばん多いのが、『仲のよかった家族のトラブル』なのです。
たとえば、あるお母様が亡くなったあと、二人の息子さんが遺産の分け方で対立しました。長男は「母の面倒を見てきたのは自分だから、少し多くもらいたい」と言い、次男は「相続は平等が原則だ」と譲りません。お母様は生前に「兄弟仲良く分けてね」と言っていたそうですが、その「言葉」だけでは法的な効力がなく、結局、兄弟の関係は修復できないまま終わってしまいました。
もしこのお母様が、たった一枚の遺言書を書いていたら…。おそらく争いは起きなかったでしょう。
日本では、いまだに遺言書を残す方が少ないのが現状です(自筆証書遺言と公正証書遺言を合わせても遺言を書いている割合は11%だと言われています)。
理由を聞くと、「縁起でもない」(これはうちの親父がよく言っていました)「うちには大した財産がない」「うちは仲がいいから、家族に任せれば大丈夫」といった声が多く返ってきます。
しかし、遺言書の目的は今では『財産の多い少ない』ではなくなっています。
本当の目的は、「残された家族が争わないようにすること」なのです。
遺言書がない場合、相続人全員で『遺産分割協議』を行う必要があります。
ここで意見が合わないと、話し合いは長期化し、やがて家庭裁判所の調停にまで発展することになります。
しかも、最近は再婚家庭や子どものいないご夫婦も増え、相続人の関係がより複雑になっています。たとえ兄弟同士でも、普段の関係が薄いと、互いの主張が食い違いやすくなるのです。
遺言書には大きく分けて「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の二つがあります。
特におすすめなのは「公正証書遺言」です。公証役場で作成するため、形式ミスで無効になる心配がなく、原本も安全に保管されます。作成時には証人が立ち会うので、後から「これは偽造だ」と争われるリスクも少なくなります。
最近では、財産の内容を簡単に書き出した「財産目録」を付けて作る方も増えています。財産が多くなくても、「この家を長男に残したい」「預金の一部を孫の教育費に使ってほしい」といった想いを形にしておくことができます。
また、遺言書を作ることで、『自分の人生の整理』にもつながります。
財産を改めて確認し、「誰に何を託すか」を考える時間は、これまでの生き方を振り返り、家族への感謝を言葉にする貴重な機会です。
「家族が争わないように」という想いを、紙に残しておくことこそが、最後の優しさなのかもしれません。
もし「うちはまだ早い」と感じている方も、まずはエンディングノートから始めてみてください。
そこから自然に、「遺言書を書こう」という気持ちが生まれてくるはずです。
そして、実際に遺言書を作る際は、行政書士などの専門家に相談すれば、形式や内容の不備を防げます。
相続は、いつか必ずやってくる『家族の試練』です。
そのときに家族の絆を守れるのは、あなたが今のうちに残す一枚の遺言書です。
「うちは大丈夫」…そう思った今が、実は一番の準備どきかもしれません。

第44回 相続と終活の相談室
行政書士
家族信託専門士 中家 好洋下記は弊所のホームページです。
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