第16回いんざいの生きもの紹介「ヒガンバナ」 亀成川を愛する会(森林インストラクター 小山尚子)
彼岸になると、あちこちでいっせいに咲くヒガンバナ。赤い色が目に入ると、
ああ、彼岸なのだと納得するのが秋の始まり、咲く時期のあまりの正確さに驚いたことはありませんか。例年にない今年の暑さでは、どうなるのでしょうか。気候変動の影響はニンゲンだけでなく、当然ながら生きものにも見られているので、ヒガンバナの体内時計が今年はどう働くか、心配です。
ところで、ヒガンバナが一斉に花開くのは、なぜでしょう? 考えられるのは、日本に咲くヒガンバナのほぼすべてが、クローンだからです。大昔に大陸からやってきた(連れてこられた?)ヒガンバナは、染色体異常のため、種をつけません。球根一つから広がった、遺伝子が同一のクローンなのです。
また、花の時期、ヒガンバナの葉っぱを見ることはありません。「葉見ず花見ず」という別名があるように、彼岸の頃に球根から一斉に茎をのばして、花を咲かせます。葉を茂らせるのは、秋から冬です。他の草花と日光をとり合わないという控えめな性格なのか、あるいは他の植物が休眠中の冬に日照を独り占めにしようという生き残り戦略からか、葉だけの頃は、ヒガンバナに気づくことは少ないです。
ヒガンバナの球根には毒がありますが、その毒を抜いて飢饉の時の食用にしたため、田んぼのまわりや墓のまわり,集落の境界など、いろいろな場所に植えられました。この二つの理由で花を採らないよう、花を採ると火事になる火事花とか地獄花とか死人花とか忌み嫌われる名前がつけられました。
ヒガンバナは華やかな花ですが、花屋さんで見かけることはないですし、花瓶に飾られることもないでしょう。幼稚園の頃、男の子たちと勇気を競って、絶対触ってはいけないと言われていた花を摘んで、川にすぐに捨てた思い出があります。
たくさんある別名の一つ「曼殊沙華」は、仏典に由来する名前で詩や歌にもなっていますが、私の一番好きなのは、韓国名の「想思華」です。
花は葉を想い、葉は花を想う……。
お知らせ
市民活動支援センター主催による市民団体の発表会「だんごまつり」が、今年はイオンモールと北総花の丘公園で開催されます。当日、NPO法人亀成川を愛する会では、「いんざいの自然と生きもの紹介」のスライドショーを実施する予定です。皆様のご来場をお待ちしております。
日時:10月4日(土)13時~ 及び5日(日)11時~
場所:イオンモール モール棟1Fコスモスコート(エスカレーター付近)
追記
印西でヒガンバナといえば、結縁寺。「にほんの里100選」に選ばれている結縁時地区は、谷津と台地のまとまった集落に、田んぼ、畑、ため池、熊野神社の鎮守の森、国指定重要文化財「銅造不動明王立像」を有する結縁寺、民間信仰(六地蔵信仰、庚申信仰、子安信仰、水神信仰、大師信仰、馬頭観音信仰など)の石仏、頼政と名馬伝説など、農業と伝統と文化と伝説がそろって、魅力ある地区となっています。「にほんの里100選」に推薦したケビン・ショートさんによると、フォークロアパーク(民俗学公園)だそうです。
結縁寺のため池正面に設けられた案内板の絵では、中央を水色の小川が流れている薄緑色の部分が谷津の水田にあたります。美しい谷津と台地からなる珠玉の場所ということがよくわかります。
ケビンさん作成の各所の案内板や寺内のトイレ、駐車場などは、印西市公益信託まちづくりファンドを申請して、ラーバン千葉ネットワークが整備したものです。地域外の人のための費用投入でした。ですが、本来は、農業を守ることこそ、この美しい地域を守ることだと思います。
都市部の公園や街路樹は、景観の問題から、税金を使ってきれいにしています。景観と食を守るため、農業地域も同様のことが考えられないでしょうか。先日、北総線に乗りましたら、ラッピングトレイン=北総線沿線活性化トレインで複数の車両がすべて印西市の情報で溢れていました。「自治体経営力ランキング2年連続全国第1位!」というポスターも貼られていました。里山と都市機能を持つ、印西、里山を守ることも大きな使命と思います。農業と緑にも目を向けてほしいのです。
提供 RCN ラーバン千葉ネットワーク